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マスターズ甲子園応援団長:重松清氏
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 ■ 作 家 : 重松 清 氏
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。1991年『ビフォア・ラン』でデビュー。1999年『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回山本周五郎賞、2001年に『ビタミンF』で第124回直木賞受賞。話題作を次々発表する傍ら、ライターとしても、ルポルタージュやインタビューを手がける。
他の著書に『定年ゴジラ』『半パン・デイズ』『世紀末の隣人』『流星ワゴン』『ニッポンの単身赴任』『ニッポンの課長』『きよしこ』『トワイライト』『疾走』『愛妻日記』『卒業』『教育とはなんだ』『最後の言葉』(共著)『いとしのヒナゴン』『なぎさの媚薬』『その日のまえに』『きみの友だち』『熱球』、『夢・続投!マスターズ甲子園』など多数。



『 夢・続投!マスターズ甲子園 』 重松 清 著 / マスターズ甲子園実行委員会 編

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応援メッセージ

>> 重松清氏プロフィール >>
二十数年前、ぼくは甲子園に憧れる田舎町の高校生だった。
といっても、野球部にいたわけではない。
根っから団体行動が苦手で、ヘタレな根性なしの男である。


中学時代は野球部だったものの、高校に入ると、
野球のレベル以前に練習の厳しさにビビってしまい、
「日曜日は練習が休みだから」という理由だけで
未経験のハンドボール部に入部して……
当然のごとく半年間で退部してしまった、
まったくもって情けない高校生だったのだ。


だからこそ、坊主頭で真っ黒に陽灼けした野球部の連中がまぶしかった。
「奇跡」がまとめてやってこなければたどり着けそうもない、
遙か彼方の甲子園を目指して、ひたすら白球を追う彼らのことが――
「よくやるよなあ」と冷笑のポーズをとりながらも、
うらやましくてしかたなかった。


だって、あいつらみんな、甲子園があるから、がんばっていたんだもの。
あいつらには、必死にがんばるための原動力が、しっかりとあったんだもの。
「目指せ、甲子園……」とつぶやけば、どんなにキツい練習にも耐えられる。
そんな呪文のような言葉だったのだ、甲子園は。
目標と呼ぶには、ほんとうは遠すぎる。
でも、甲子園は野球部の連中にとって、たしかに夢であり、憧れだった。
少々無謀だとわかっていても、
「目指すぞ!」と言い切ることができるものが、彼らにはある。
それがほんとうに、うらやましかった。憧れていた。


冒頭の言葉は、だから、正確にはこんなふうに言い換えるべきだろう。
ぼくは甲子園という憧れを持っている連中に憧れる、田舎町の高校生だった――と。
いまでも、その思いは変わらない。
いや、むしろ、オヤジと呼ばれる歳になって、
ますます、あの頃の野球部の連中のひたむきな「憧れ」への立ち向かい方が、
まぶしく感じられる。
憧れのひと、憧れのもの、憧れの場所、憧れの時間……なんでもいいんだ、
とにかく「憧れ」を持っているひとは、絶対に幸せなんだと思う。
オトナとしてのキツい日々を生きるぼくたちに、
いま、なによりも必要なものは、お金でも地位でもなく、
「憧れ」なんじゃないか、という気もする。
かつて甲子園を夢見た皆さん。
教えてください。
いまも、甲子園は、あなたの胸の中で「憧れ」として光り輝いていますか――?
それとも、遠い青春の「思い出」として、
胸の奥のほうで、うっすらと埃をかぶっているのですか――?
『マスターズ甲子園』だってさ。
元・高校球児限定のイベントなんだって。
なんだよ、それ、オレ関係ないじゃん、ずるいよなあ……
と元・ヘタレな高校生は、ヘタレなオヤジになったいま、
ちょっとふくれつらになって、スネてみたりもする。
でも――いいなあ、サイコーだなあ、このイベント。
「思い出」が、もう一度「憧れ」に戻るんだ。
そんなことって、フツー、ない。
だから、すごい。
試合もあって、キャッチボールもあって、入場行進まであるっていうじゃないか。
「思い出」になっていた甲子園を再び「憧れ」の場所にして、
白球を追うオヤジたちの姿は――保証する、とびきりカッコいいはずだ。
見せてよ。坊主頭の高校生に戻った笑顔を。
見せてよ。中年太りのおなかが邪魔になっても、気合と根性で振り抜くフルスイングを。
十一月四日。
甲子園で、会おう。
グラウンドに立つ資格を持たないぼくは、押しかけ応援団長として、
皆さんの勇姿をスタンドから見つめるだろう。
高校時代みたいにまぶしそうに目を細め、
ときどきヤッカミ半分に「肉離れ起こすなよー」とヤジったりしながら、
もしかしたら、ふと涙ぐんでしまうかもしれない。
「憧れ」の甲子園の土を踏んだみんなが、陽に灼けた顔で、
すっきりした顔で、そして元気を増した笑顔で、それぞれの人生、
それぞれのグラウンドに帰っていけたら……いいな。

甲子園で、会おう。
ほんとうに。
会おうよ、甲子園で。
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